日の記 9
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帰り道.
いつものベンチには魔女はいない.
毎日彼女はいつここに来て,そしていつ帰っているのだろうか,と考えた.家はあるのだろうか,と少し考えた.
外見はどこから見ても普通の人間のそれなのだから,魔女だ,と言われても普通は信じられないのではないだろうか.
自分はどうして彼女が魔女だと思うようになったのか,思い返してみたがどうしてだったかはまるで覚えていない.
今日も今日とて桜が満開だった.
ちょっと風がそよぐだけでもこんなに花びらが散っていくのにもうずっと桜は満開でいる.
そのことが少し不思議だった.
明日,魔女に聞いてみようかなと思った.
空はこんなに青いのに,遠くの空は黒い雲に覆われていて,きっとあそこでは雨が降っているのだろうと思った.
ただただ運よく私のいるところが晴れているだけなのだ.
否,太陽を覆うものが無いだけなのだ.
ある,と,ない,の差.
この違いはなんだろう.
そして,誰がそんなこと気に留めるのだろう.