@がんばらないで生きていく

小説ちょこっととお本の感想,その他趣味,星を観ます

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

日の記 13

13 遠い昔に見たような夢について,私は時たま思い出すことがある. もしかしたらそれは,本当は夢ではないのかもしれない.けれどどうも現実味がないという点で明らかに夢なのだということが分かる. 朝の身支度をしながら私は今日見た夢のことを考えてい…

日の記 12

12 講義が終わった. 今日もよく晴れた春の日差しが西に傾こうとしている中,私はいつも通り帰宅しようと本館を出た. 本館はこの大学にある建物の中で一番古いらしい.. しかし,たしかに古い建物という出で立ちではあるがそこまで古いとは思えなかった…

日の記 11

11 私が中学生の頃,一度大きな彗星が日本からでもよく見える時期があった.もちろんその彗星の出現はずっと前から分かっていたことで,私はしきりに友人たちにそのことを話していた. けれど驚いたことに私の友人たちは特に興味を持つわけでもなく私の話…

日の記 10

10 目が覚めてまず確認するのは今日の日付だった. 私は朝が弱くて起きてすぐは何も考えられないし,立ち上がる力もない.あるのはただ何となく今日も同じ身の中にいるのだなというぼんやりとした認識と,目覚めてしまったという若干の絶望である. もしか…

日の記 9

9 帰り道. いつものベンチには魔女はいない. 毎日彼女はいつここに来て,そしていつ帰っているのだろうか,と考えた.家はあるのだろうか,と少し考えた. 外見はどこから見ても普通の人間のそれなのだから,魔女だ,と言われても普通は信じられないので…

日の記 8

8 暗い箱の中に僕らは座っていた.天井が低くて椅子は目には見えないが,座ることによってその存在を認識している. おそらく夢を見ていたのだと思う. 私は中学生くらいの頃の背丈で,彼女はいつもどおりの姿だった. 魔女の髪がいつもより短い気がした. …